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モモのところには、いれかわりたちかわり、みんながたずねて来ました。いつでもだれかがモモのそばにすわって、なにかいっしょうけんめいに話しこんでいます。用事があってもたずねて来られないという人は、じぶんの家に来てほしいと迎えを出しました。そしてモモが役に立つことをまだ知らない人がいると、みんなはこう言ってあげたものです。「モモのところに行ってごらん!」

 このことばは、だんだん近所の人たちのきまり文句にまでなるようになりました。「ごきげんよう!」とか、「ごちそうさま!」とか、「まあ、たいへんだ!」とかの文句をそれぞれきまったときにかならず使うように、みんなはなにかことがあると、「モモのところに行ってごらん!」と言うのです。
 
 でも、どうしてでしょう?モモがものすごく頭がよくて、なにを相談されても、いい考えをおしえてあげられたからでしょうか?なぐさめてほしい人に、心にしみることばを言ってあげられたからでしょうか?なにについても、賢明で正しい判断をくだせたからでしょうか?

 ちがうのです。こういうことについては、モモはほかの子とおなじ程度のことしかできません。するとモモには、どこかこう、人の心をほがらかにするようなところがあったのでしょうか? たとえば、とくべつ歌がじょうずだとか、なにかの楽器がうまいとか、それともーなにしろモモはサーカス場みたいな円形劇場に住んでいるのですからーおどりだの、アクロバットの曲芸だのができたのでしょうか?

 いいえ、それもちがいます。
 
 ひょっとすると、魔法がつかえたのでしょうか?どんななやみや苦労も吹きはらえるような、ふしぎな呪文でも知っていたのでしょうか?手相をうらなうとか、未来を予言するとかができたのでしょうか?

 これもあたっていません。

 小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。なあんだ、そんなこと、とみなさんは言うでしょうね。話を聞くなんて、だれにだってできるじゃないかって。

 でもそれはまちがいです。ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。そしてこの点でモモは、それこそほかには例のないすばらしい才能をもっていたのです。

『モモ』 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳 岩波書店
二章 めずらしい性質とめずらしくもないけんか より









by masumihug | 2011-05-17 18:27 | 古い記事(モモの話など)

わたしを知って、わたしを生きる。神奈川県藤沢市にて、心理セラピーを行っています。ホームページこちらです。 https://kiku-therapy.jimdo.com/


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